幸せという名の「薄氷」の上で
今日、ネットの海でこんな「つぶやき」を見つけました。
自分の思考の癖として「何か良いことが続くと怖くなる。何か良からぬ大きな反動があるのではないか」と思いやすいです。
これを読んで、「私のことだ」とドキッとした人は多いのではないでしょうか。 仕事が順調、家族も健康、天気もいい。 本来なら手放しで喜べばいいのに、完璧であればあるほど、「嵐の前の静けさ」のように感じてしまう。 「この後、とんでもないしっぺ返しが来るぞ」と、わざと自分を不安にさせて、心の準備をしてしまう。
もし、あなたもこの「幸せ恐怖症」に悩んでいるなら、安心してください。 それはあなたの性格がネガティブだからではありません。 あなたの脳が、「現状維持」という仕事を真面目にこなしすぎているだけなのです。
1. 幸せには「定温」がある(アッパーリミット問題)
心理学者のゲイ・ヘンドリックスは、この現象を「アッパーリミット(上限)問題」と名付けました。
人間にはそれぞれ、無意識に設定された「幸せの許容範囲(サーモスタット)」があります。 例えば、エアコンを25度に設定している部屋が、急に30度(最高に幸せな状態)になったらどうなるでしょうか? エアコンは慌てて冷風を送り出し、元の25度に戻そうとしますよね。
心もこれと同じ動きをします。 「自分にはこれくらいの幸せが分相応だ」という設定温度を超えて良いことが起きると、脳がパニックを起こすのです。 「異常事態だ! 居心地が悪い! 早くいつもの『そこそこの不安』がある状態に戻せ!」
その結果、無意識に自分を不安にさせる妄想をしたり、わざと失敗して怒られたりして、安心できる(慣れ親しんだ)「不幸レベル」まで自分を引きずり下ろそうとします。 つまり、今の不安は、脳の「冷却機能」が正常に作動している音なのです。
2. 「しっぺ返し」は存在しない
私たちは、「運の総量決まっている」とか「人生はプラスマイナスゼロだ」という言葉に縛られすぎています。 「良いことがあったら、悪いことがある」
しかし、冷静に考えてみてください。 昨日の夕飯が美味しかったからといって、今日、階段から落ちる必然性はどこにもありません。 これらは完全に独立した事象です。
あなたが感じている「反動があるのではないか」という予感は、未来予知ではありません。 幸せに慣れていない脳が作り出した、「幸福という居心地の悪さ」から逃げるための言い訳にすぎないのです。
3. 「リミッター」の外し方
では、どうすればこの恐怖から抜け出し、幸せを素直に受け取れるようになるのでしょうか。 荒治療は必要ありません。ただ、「気づく」だけでいいのです。
不安が襲ってきた瞬間、こうつぶやいてみてください。 「おっと、今、私のアッパーリミットが作動しているな」
「しっぺ返しが来る」と怯えるのではなく、「ああ、今私は『幸せすぎて居心地が悪い』と感じているんだな」と、主語を自分に戻してあげるのです。 そして、そのザワザワする感覚と一緒に、ただ深呼吸をしてください。
「この幸せを受け取っても安全だ」と脳に教え込むには、少しずつ設定温度を上げていくしかありません。 怖いまま、逃げずに、その「良いこと」の中に留まり続ける練習です。
幸せは「前借り」ではない
あなたは、罰を受けるために幸せの前借りをしているわけではありません。 その「良いこと」は、あなたが積み上げてきた努力の結果か、あるいはただの素晴らしい偶然です。 どちらにせよ、それは今のあなたが受け取る資格があるものです。
次に「怖い」と感じたら、それは「もっと幸せになっていい」という許可証が届いた合図だと思ってください。 大丈夫。しっぺ返しなんて来ません。 ただ、もっと良い明日が来るだけです。


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