【心理学】「せっかくここまでやったのに」が人生を重くする。日常に潜むサンクコストと「損切り」の技術

心理学

その映画、本当はもう観たくないのでは?

「見始めた映画がつまらない。でも、もう1時間も観ちゃったし、チケット代も払ったから最後まで観なきゃ……」 「お腹はいっぱいだけど、残すのはもったいないから無理して食べた」

みなさんは、こんな経験ありませんか? 私はしょっちゅうありました。「もったいない精神」と言えば聞こえはいいですが、実はこれ、経済学や心理学では「サンクコスト(埋没費用)の呪縛」と呼ばれる危険な状態です。

今日は、私たちの判断を鈍らせるこの心理効果について、勉強したことを整理します。

サンクコスト(埋没費用)とは?

サンクコストとは、「すでに支払ってしまい、どうあがいても取り返すことのできない費用(お金・時間・労力)」のことです。

冷静に考えれば、取り返せない過去のコストは無視して、「これからどうするか」だけを考えるのが合理的です。 しかし、人間は感情の生き物。「せっかくこれだけ投資したんだから、回収しないと損だ!」という心理が働き、ズルズルと無駄な努力を続けてしまいます。

これを「コンコルド効果」とも呼びます。(開発費がかさみすぎて、赤字になると分かっていながら開発を止められなかった超音速旅客機コンコルドの事例が由来です)

日常のあちこちに潜む「呪縛」の正体

私の生活を振り返ってみると、驚くほどこの「サンクコスト」に縛られていました。

1. 「つまらない本」を読み続ける

「1,500円も出して買ったし、最初の50ページ読んだし…」 そう思って、内容が入ってこないのに意地で最後まで読もうとしていました。 しかし、これこそが罠です。本代(1,500円)はもう戻ってきません。無理して読むことで、さらに貴重な「時間」という資産までドブに捨てていることになるのです。

2. 「使っていないサブスク」を解約できない

「いつか見るかもしれないし」「解約手続きが面倒だし、過去の会員ランクが消えるのは惜しい」 これも典型的な例です。過去に支払った期間のことは忘れて、「今の自分に必要か?」だけで判断すべきでした。

3. 「腐れ縁」の人間関係

これが一番厄介かもしれません。 「学生時代からの付き合いだから」「あんなに尽くしたのに」 一緒にいて楽しくない、むしろ疲れる相手なのに、関係を断てない。これも「過ごした時間」というサンクコストに執着している状態です。

対策:「ゼロベース思考」を持つ

では、どうすればこの呪縛から逃れられるのでしょうか? 投資の世界には「損切り」という言葉がありますが、日常生活では以下の問いかけが有効だと学びました。

「もし、まだお金も時間も一切使っていない状態だとしたら、今からこれをやりたいか?」

  • 本の場合: まだ買っていないとして、今の気分でこの本を買うか? → NOなら、読むのをやめる。
  • 食事の場合: まだ一口も食べていないとして、今からこの量を注文するか? → NOなら、残す(無理して食べない)。

「過去」を見るのではなく、「今、ここから」の損得だけを見る。これをゼロベース思考と言います。

まとめ:損切りは「失敗」ではない

サンクコストを切り捨てる(損切りする)ことは、一見すると「今までの努力を無駄にする」ように感じるかもしれません。

しかし、未来の自分の時間を守るためには、勇気ある撤退が必要です。

「せっかく〜したのに」という言葉が頭に浮かんだら、それはサンクコストの罠にかかっている合図かもしれません。 思い切って手放してみると、驚くほど心が軽くなりますよ。

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